何かに回収されちゃう感じ

 

 

              

 

     半年間ブログを書いていなかった。これは特に理由がない。「社会人になったから忙しくて書かなかったのね」と言われればそれは間違いとは言えない。けれどこんなブログの一記事を書けないほど忙しくはなかった。

 

  最近ブログの記事に対する、友人からの評価が下がった、というのが、「なんでブログ止めたの?」の質問に対して僕が周囲によく使っている「理由」である。でも一人で冷静に考えてみたら、そもそも他人のために書いていないこのブログの評判が悪かったとて、本当は別にどうでもいい。評判が悪かったから~~というそれは「友達用の言葉」でつくられたもので、「自分用」の理由を探してみたらそれは「無い」というのが正しい。

 

    当たり前の話だが、物事には原因と結果がある。なにかの問題について考えるとき僕たちには、原因を突き止めて(あるいは推測して)「これは○○だから××なんだ」という理解の仕方がある。これは社会を生きる上で最も重要ともいえる、いわゆるロジカルな思考だが、一方でそれを一人の人間、自分に当てはめられたときに「いやいや、そうじゃないよ!」と言いたくなる一種の反抗精神がある。

  

    僕はずっと「なんで○○したの?」と友人に尋ねられた時に、「それは××だよ!」と明確に答えてしまうことに抵抗があった。自分用には「△△や◇◇や、いや☆☆も・・・」と言語化できない(あるいはするには非常に時間のかかる)感情を用意しているが、他人には他人用の分かりやすい答えを用意しなければならない。

    僕は文系でスポーツ新聞部に所属しながら、演劇やお笑いを見るのを趣味として大学生活を送っていた。そして大学卒業後にシステムエンジニアになったのだがそれを言うと友人に「なんで?」と質問された。僕の大学生活の内容と就職先がうまく相手の公式にはまらなかったのだろう、当然の質問だがこの時はとても困った。

    もちろんこの場合、それなりの理由・回答は一応存在している。でもそれを仲の良い友人に伝えて「ああそういうことなのね」と理解されてしまう感じが単純に好きじゃない。(こういう感情が俗にいう「厨二病」的だというのならそれはそれでいい)

    だからぼくはひたすらにとぼけるし、おちょける。そもそもどんな仕事に就いたのかも言わないことが多い。「どこに就職したの?」ときかれても「んーとね、NASA」とか言ってはぐらかす。なぜなら職業を答えて、それを選んだ理由を答えて、、と続けていくとどんどん相手の中で「こいつは○○だ」という、相手の常識が築き上げたカテゴリーのようなものにすっぽり回収されていく感じがある。「これはこうね、それはそうね」とパズルにピースをはめていく感じ。生身の人間に対してそれをやられるとたまらなく気持ち悪い。

 

    「ああ、そういうことなのね。わかった」と相手の「公式」に当てはめられるともうその公式ありきで今後の会話が進んでいってしまう。マスコミに就職した人が「仕事つらい」というと、会話の相手はその人がマスコミに就職していたという知識を持ち出して「マスコミだからね~」と謎の「理解」をしめした返答をする。人が持つこの能力はコミュニケーションを円滑にする面がもちろんある一方で、なにか大事なものを見落としてしまっているような感覚がある。いわゆる一般常識のような「それはそういうものだよね」というテンプレートに「回収していく」ということの暴力性を忘れたくない。

 

    「理解しました」というのはある段階の「終了宣言」でもある。その「終了」が次の段階へのステップとなるのなら全然いい。この記事は全体的にすこしぼやかして言ってしまっているので伝わっていないかもしれないが要は相手が僕を「理解しました」という反応を僕にみせてくるときに「ひとまず」という要素があるかどうかによって僕の相手に対する信頼度は変わる。

「ひとまずそういうことなのね」という理解をしたがらない人は、すぐに終わらせにかかる。

僕が質問に答えない、などよくわからないことをしていると「よくわからない人」として大きな何かに回収し始める。僕はそれをされたときに「ええ・・」という気持ちになる。

 

    人と向き合うとき、結局はこういうことなんだよ みたいな明確な答えは存在しないことが多い。ぼくは「こうだよね」で始まるコミュニケーションではなくて「こうなのかな?」という探りあいのような、そのあやふやな感じをそのままコミュニケーションとして友人と続けていきたいのである。そのためには僕は質問をはぐらかしたり理由を答えなかったりしている。

                でもそれが正しい答えなのかは、当然ながらわからない。

 

 

 

 

 

 

 

   

 

 

 

 

         

     

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